オランダは、週の労働時間がEUでいちばん短い国です。
2025年の平均は週31.9時間で、EU平均より4時間短い。
駐在でオランダに来て、この数字の裏にある考え方が気になりました。
感覚で語られがちな「オランダは働かない」を、両国の公式統計で確かめてみます。
この記事では、労働時間、パートタイムの扱い、有給、育児休暇の制度を、OECDと両国政府の統計で比べてまとめました。
労働時間の違い

| 日本 | オランダ | ドイツ | |
|---|---|---|---|
| 年間実労働時間(2024年) | 1,617時間 | 1,445時間 | 1,331時間 |
| 週の平均労働時間(2025年) | 31.9時間(EU最短) | ||
| 時間あたり労働生産性(2024年・購買力平価USD) | 60.1(38か国中28位) | 100.6(8位) | 98.9 |
年間の労働時間は、日本よりオランダが170時間ほど短い。
これは就業者1人あたりの平均なので、オランダのパートタイムの多さが数字を押し下げています。
OECD自身が「この統計は国同士の水準比較には向かない」と注意書きをつけているので、差の大きさは目安として見てください。
短いのに、時間あたりの生産性は高い
「そんなに働かなくて経済は回るのか」という疑問に対する答えが、時間あたりの労働生産性です。
オランダは1時間あたり100.6ドル、日本は60.1ドル。1.7倍の差があります。
短い時間で成果を出す、という前提で社会が組まれているのが数字に出ています。
理由として語られるのは、次のような点です。
- パートタイムでも責任ある仕事を任せる。時間が短いことを理由に業務内容や待遇を変えることを法律が禁じている(後述)
- まとまった休暇を取るのが前提。法定の有給は週労働時間の4倍(週40時間なら20日)
- EU域内から人材を補える柔軟な労働市場
パートタイムの扱い
| パートタイム比率(週30時間未満・2024年) | 全体 | 女性 |
|---|---|---|
| オランダ | 35.0% | 52.0% |
| 日本 | 25.8% | 38.4% |
オランダでは働く人の3人に1人、女性では2人に1人がパートタイムです。
日本との違いは比率そのものより、パートの「扱い」にあります。
- 労働時間の長さを理由に、採用・継続・解雇の条件で差をつけてはいけない(民法7:648条、1996年施行)
- 勤続26週以上なら、労働時間・勤務場所・勤務時間帯の変更を会社に申請できる(Wet flexibel werken)
- 時間の変更は、会社側に重大な事業上の理由がない限り認めなければならない
この法律があるので、週3日勤務でも昇進や福利厚生の対象から外れにくく、フルタイムに戻すのも申請で済みます。
日本では正社員と非正規の二極化が根強く、時短勤務にするとキャリアが止まりやすい。
オランダは「時間を減らす」と「キャリアを止める」が別の話になっています。
有給休暇
| 日本 | オランダ | |
|---|---|---|
| 法定の年次有給 | 勤続6か月で10日、最大20日 | 週労働時間×4(週40時間なら20日)。勤続条件なし |
| 実際の取得 | 付与18.1日のうち12.1日(取得率66.9%・2024年) |
日本の取得率66.9%は1984年以降でいちばん高い数字ですが、それでも付与の3分の2です。
オランダは「消化率」という統計自体をあまり見かけません。
夏に3週間、年末に2週間と、まとめて休むのが前提になっています。
育児休暇
| 日本 | オランダ | |
|---|---|---|
| 出産直後の父親(配偶者)の休暇 | 出生時育児休業(産後パパ育休)最大4週。給付67% | 出産休暇1週(会社が100%支給)+追加5週(UWVから70%) |
| 育児休業 | 原則1歳まで(延長で最長2歳)。給付は180日まで67%、以降50% | 26週のうち9週が有給(70%)、1歳まで。残り17週は無給で8歳まで |
| 2025年からの上乗せ(日本) | 両親とも14日以上取ると、最大28日間は80%(手取り10割相当) |
制度の長さだけ見ると、日本の育休は1年、オランダの有給部分は9週と、日本のほうが長いです。
違いは、復帰後にあります。
オランダでは上の法律があるので、親が時短にしても待遇が変わりません。
保育費用は高額ですが、国の補助(kinderopvangtoeslag)があります。
職場でも「子どもの迎えで帰ります」が通りやすい空気があります。
日本は制度は長いが、復帰後の時短がキャリアに響きやすく、小学校に上がると預け先が減る「小1の壁」も残っています。
外国人として働く環境
オランダはEU域内の人材移動が活発で、英語だけで働ける企業も多いです。
外国人が「当たり前にいる」前提で制度や職場の文化ができています。
日本も外国人材の受け入れは進んでいますが、中心は技能実習や特定技能で、言語の壁は大きいままです。
まとめ
数字で見ると、オランダは年間労働時間が日本より170時間短く、時間あたりの生産性は1.7倍。
パートタイムは3人に1人で、時間を減らしても待遇を変えられない法律があります。
日本の良さは、育休の長さと雇用の安定、勤勉さを評価する文化。
オランダの良さは、時間の短さと柔軟さ、子育てと仕事を両立しやすい空気です。
調べるとオランダがかなり良く見えますが、保育費の高さや、住宅不足のような暮らしの別の面は、この記事では触れていません。
住んでいて体感した違いは、別の記事で書いていきます。
出典(10件)
- 労働政策研究・研修機構 データブック国際労働比較2026 表6-1(PDF)(OECD年間実労働時間 2024年/2026年10月時点)
- 同 表3-8(PDF)(OECDパートタイム比率 2024年/2026年10月時点)
- 日本生産性本部 労働生産性の国際比較2025(時間あたり労働生産性 2024年/2026年10月時点)
- Eurostat 2026年5月27日(オランダの週平均労働時間 2025年)
- 厚生労働省 令和7年就労条件総合調査(PDF)(年次有給休暇の付与・取得日数・取得率)
- Rijksoverheid 有給休暇(法定有給は週労働時間の4倍/2026年10月時点)
- オランダ民法 7:648条(労働時間による差別の禁止)
- Wet flexibel werken(労働時間・場所の変更申請権)
- Rijksoverheid 出産休暇・育児休暇(1週+5週、有給育児休暇9週/2026年10月時点)
- 厚生労働省 育児休業給付 Q&A(給付率・出生後休業支援給付/2026年10月時点)
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