オランダの街をGoogleマップで眺めていると、公園の多さに気づきます。
住宅街の角を曲がれば芝生広場、運河沿いはサイクリングロードと木陰、住宅の真ん中にも小さな遊具スペース。
家探しの途中で気になって調べてみました。
洪水対策と都市計画の法律、それに「徒歩10分以内に公園」という市の目標が関係していました。
この記事では、洪水対策の国家事業、2024年の新しい法律、アムステルダム市の緑の方針、日本との数字の比較をまとめました。
洪水対策が公園になる国
オランダは国土の大部分が海面より低く、昔から堤防と運河の整備が死活問題でした。
その防災施設を、コンクリートで固めて終わりにせず、周りを緑地にして市民の憩いの場にしてしまう。
洪水の緩衝地帯でピクニックが成り立っているのが、この国の特徴です。
ルーム・フォー・ザ・リバー
代表例が「川に空間を(Ruimte voor de Rivier)」。国の水管理局(Rijkswaterstaat)が進めた事業です。
「洪水が来そう?じゃあ川の幅を広げて、周りを緑地にしよう」という発想の事業です。

- IJssel川・Waal川・Nederrijn川・Lek川の34地点で39の対策
- 総額23億ユーロ。2006年着工、2019年初めに完了
- 約400万人の安全と、川沿いの居住環境の質の向上が目的
堤防を内陸に移して河川敷を広げる、河川敷を掘り下げる、副水路を作る。
どの対策でも、川が広がれるようにした土地は、普段は緑地や遊歩道として使われています。
結果として、防災と環境保全と住民の生活の質を同時に上げることになりました。
緑を減らしにくい法律
2024年1月1日に、環境・空間法(Omgevingswet)が施行されました。
都市計画、環境、建築、水、自然など、物理的な生活環境に関する数十の法律を1本にまとめた法律です。
住環境の質を一つの枠組みで判断するので、緑を減らす開発には「それで本当に住環境の質は下がらないのか」が問われます。
日本は都市計画法、環境基本法、建築基準法、道路法と分野ごとの縦割りです。
「街全体として環境をどう守るか」をまとめて考える枠組みはほぼありません。
「玄関から徒歩10分で公園」が市の目標
アムステルダム市は2020年に「緑のビジョン2020〜2050(Groenvisie)」を採択しました。
掲げている目標は具体的です。
- 玄関から10分歩けば公園に着く。15分自転車で走れば自然地域に着く
- 「groen, tenzij」=緑を残すのが原則。減らすには理由が要る
- 新しい都市林と都市公園を作る
2025年1月時点の市の調査では、住宅の95%が徒歩10分以内に公園的な緑地を持っています。
住民1人あたりの公共緑地は57平方メートルです。
背景には、WHO欧州事務局が2017年に出した目安があります。
「自宅から直線300メートル(徒歩5分)以内に、0.5〜1ヘクタール以上の公共緑地があること」。
オランダの都市では、広大な公園が一つあるより、小さな緑が生活圏に分散して配置されているのが特徴です。
「ちょっと一息つける緑」が徒歩圏にある暮らしは、この目安から来ています。
公園は生活インフラ
オランダの公園は、子どもの遊び場というより、子どもから高齢者までが使う生活インフラです。
芝生で昼寝する人、ベンチで本を読む人、ランニングする人。
自転車道が公園とつながっていて、「緑と移動と健康」がワンセットになっています。
日本の公園は子ども向けが中心で、大人がのんびり読書したり昼寝する文化はあまり根付いていません。
自転車道が公園と連動しているケースも少なく、発想が逆向きです。

1月の曇天の日に歩いたフォンデル公園でも、ランニングする人や芝生で犬を走らせる人がいました。寒くても公園が生活の一部になっています。
日本と比べると
| 日本 | アムステルダム | |
|---|---|---|
| 1人あたりの公園・緑地面積 | 約11.0平方メートル(都市公園等・2024年度末) | 57平方メートル(公共緑地・2025年1月) |
| 徒歩10分以内に公園がある住宅 | 95% |
国土交通省自身が「諸外国の都市と比較するとまだ低い水準」と書いています。
オランダ全国の1人あたり緑地の公式統計は見つからなかったので、ここではアムステルダム市の数字と並べました。
日本にも緑被率を定めて敷地を緑化する条例はあります。
東京都心の屋上緑化や壁面緑化もその一つです。
ただ、あれは所有者の敷地内での環境負荷軽減が目的で、誰でも使える公共空間を増やす発想とは方向が違います。
まとめ
オランダの公園の多さは、3つのことが重なった結果です。
- 洪水対策の土地を緑地として開放する都市計画(Ruimte voor de Rivier)
- 緑を減らしにくい法律(Omgevingswet、2024年)
- 「徒歩10分で公園」を数字で追う市の方針(アムステルダム Groenvisie)
Googleマップで上から眺めたときの緑の密度は、政策の結果でした。
引っ越してから歩いたフォンデル公園は、別の記事にまとめています。
出典(6件)
- Rijkswaterstaat Ruimte voor de Rivier(34地点・39対策・23億ユーロ・2019年完了/2026年10月時点)
- Rijksoverheid Omgevingswet(2024年1月1日施行/2026年10月時点)
- アムステルダム市 Groenvisie 2020–2050(徒歩10分・自転車15分の目標/2026年10月時点)
- アムステルダム市 Monitor Groen 2024(95%・57平方メートル/2025年1月1日時点)
- WHO Europe Urban green spaces: a brief for action (2017)(300m以内に0.5〜1haの目安)
- 国土交通省 都市公園等整備現況(PDF)(1人あたり約11.0平方メートル・令和6年度末)
READ NEXTあわせて読みたい





コメント