オランダに住み始めると、早い段階で向き合うのが医療保険の加入です。
日本なら会社員は社会保険、それ以外は国民健康保険と半ば自動で決まります。
オランダは民間の保険会社から自分で選んで契約します。
「民間保険なのに加入が義務?」「年385ユーロまで全額自己負担って何?」
私も駐在帯同で来た最初の年、一つずつ調べました。
この記事では、基本保険と追加保険の違い、加入義務と期限、自己負担の仕組み、2026年の保険料、加入の流れをまとめました。
制度の全体像

オランダの医療保険は、「全国共通の最低限を義務で持ち、足りない分を任意で足す」仕組みです。
| 基本保険(Basisverzekering) | 追加保険(Aanvullende verzekering) | |
|---|---|---|
| 加入 | 居住者全員に義務 | 任意 |
| 保障内容 | 国が決める。どの会社でも同じ | 会社ごとに違う |
| 保険料 | 会社ごとに少し違う(月140〜185ユーロ) | 内容により月数ユーロ〜数十ユーロ |
| 自己負担(eigen risico) | 年385ユーロまで自己負担 | 項目ごとの上限・回数制 |
窓口はどちらも民間の保険会社です。
日本の「公的保険が基本で、民間保険は上乗せ」という形に近いようで、公的な部分まで民間が運営している点が違います。
誰が、いつまでに加入するのか
オランダに住民登録(BRP)をしている人、またはオランダで働いて給与を受け取っている人は、基本保険への加入が義務です。
期限は義務が発生した日(住民登録や就労開始)から4か月以内。
4か月以内に契約すれば、義務発生日まで遡って保険が適用されます。保険料も遡って払います。
- 未加入だとCAK(中央管理局)から通知が来る。3か月以内に加入しないと罰金529.74ユーロ(2026年)
- さらに3か月放置すると2回目の罰金。それでも未加入ならCAKが代わりに保険会社と契約する
- 免除されるのは、就労しない留学生、外交官、国際機関の職員など一部だけ
18歳未満の子どもは保険料がかからず、自己負担もありません。親の保険に登録します。
日本の会社から派遣される駐在員は例外になることがある
日本とオランダの間には社会保障協定があり、5年以内の予定で日本の会社から派遣される人は、日本の年金と医療保険にだけ加入し続ける扱いになります。
派遣元の会社が年金事務所で「適用証明書」を取り、それをオランダ側に示す仕組みです。
この場合、オランダの基本保険に入る義務はありません。
現地の医療費は、日本の健康保険の海外療養費(いったん自己負担して後から請求)と、会社が付ける海外駐在員向けの民間保険で賄う形が一般的です。
ただし、適用証明書を取っているか、帯同家族がどう扱われるか、どの保険でカバーされるかは会社の契約しだいです。
オランダ側で判定が必要なときは、SVB(社会保険銀行)の「onderzoek Wlz」という審査で加入義務の有無が決まります。自己判断で未加入にせず、人事と保険会社に確認してください。
基本保険で何がカバーされるか
保障内容は国が毎年決めていて、どの保険会社を選んでも同じです。
- ホームドクター(huisarts)の診察
- 専門医の診察(ホームドクターの紹介状が必要)
- 入院、手術、病院の救急
- 救急車
- 処方薬(高額な薬は年250ユーロまでの自己負担あり)
- 妊娠・出産、助産師、産後ケア(kraamzorg)
- 精神医療(GGZ)
- 18歳未満の歯科
含まれないのは、大人の通常の歯科治療、一般的な理学療法(最初の20回)、普通のメガネやコンタクトです。
ここを補うのが追加保険です。
内容は毎年少しずつ変わります。この記事は2026年版の政府の案内をもとにしています。
自己負担(Eigen risico)の仕組み
日本との最大の違いがここです。
日本は毎回3割負担。
オランダは年385ユーロに達するまで原則100%自己負担、達したらその年は原則0です。
385ユーロ(2026年)は国が決める額で、どの保険会社でも同じ。
暦年(1月〜12月)でリセットされます。
自己負担にかかるもの・かからないもの
| 385ユーロの対象になる | 対象にならない(最初から保険) |
|---|---|
| 専門医の診察、病院の検査・治療 | ホームドクターの診察(夜間診療所を含む) |
| 入院、手術、病院の救急(SEH) | 助産師、産後ケア |
| 処方薬、血液検査 | 2型糖尿病・COPD・心血管リスクの管理プログラム |
| 精神医療 | 18歳未満の医療すべて |
ホームドクターの診察が自己負担の対象外になっているのは、「まずホームドクターへ」というオランダ医療の入口を保つためです。
任意で上乗せすると保険料が下がる
385ユーロに加えて、100〜500ユーロ(100ユーロ刻み)の任意の自己負担を上乗せできます。
上乗せすると月々の保険料が安くなります。
ただし、医療を使った年は支払いが一気に増えるので、病院にかかる予定がない人向けの選択です。最大で年885ユーロの自己負担になります。
2027年はどうなる
2026年まで凍結されていた385ユーロは、2027年に物価連動で400ユーロになる見込みです(政府の2027年予算案。省令で確定)。
前の内閣が掲げた「165ユーロへの引き下げ」は法律になりませんでした。
現在は逆に引き上げの方向で、60ユーロの上乗せが2028年に予定されています。
ここは毎年動くので、契約更新のたびに確認が要ります。
追加保険は「使う予定」で選ぶ
追加保険は、医療の種類ごとに「年○ユーロまで」「年○回まで」という個別の枠があります。
- 理学療法:年9回まで
- 歯科治療:年250ユーロまで
- メガネ・コンタクト:2年に1回、100ユーロまで
こうした形が多く、枠を超えた分は全額自己負担です。
数字は会社とプランで大きく違います。
例)年の前半に病院で検査を受けて385ユーロを払い切ったあと、歯医者で300ユーロかかった場合
- 病院の分:385ユーロを払ったので、基本保険の対象医療はこの年は原則0
- 歯医者の分:追加保険の歯科枠が年250ユーロなら、保険から250ユーロ。残り50ユーロは自己負担
基本保険の385ユーロを使い切っても、追加保険の枠は増えません。
追加保険は「万が一のため」ではなく、「来年、歯医者や理学療法に行く予定があるか」で判断するのがオランダ流です。
予定がなければ付けない人も多いです。
2026年の保険料の目安
日本の健康保険は収入に応じて保険料が変わりますが、オランダの基本保険は収入に関係ない月額制です。
| 2026年 | |
|---|---|
| 基本保険の平均 | 月158.77ユーロ(年1,908ユーロ) |
| 会社ごとの幅 | 月142.40〜185ユーロ |
| 追加保険 | 内容により月数ユーロ〜数十ユーロ |
| 18歳未満 | 0 |
収入が低い人には、国から医療保険手当(Zorgtoeslag)が出ます。
2026年は単身で月最大129ユーロ、パートナーありで月最大246ユーロ。所得上限は単身40,857ユーロです。
駐在家庭は収入要件で対象外になることが多いですが、条件は税務署(Belastingdienst)のサイトで確認できます。
加入と乗り換えの流れ
- BSN(市民サービス番号)を取得する(住民登録のときに発行)
- 保険会社とプランを比較する(比較サイトはzorgwijzer、independerなど)
- オンラインで申し込む
- 保険証書と契約内容を確認する
乗り換えは年に1回。
保険会社は11月12日までに翌年の保険料を公表します。
解約は12月31日まで、新しい契約は翌年2月1日まで(1月1日に遡って適用)です。
ホームドクターの登録と受診の流れは、別の記事にまとめています。
駐在家庭の場合
ここまで「自分で選ぶ」と書いてきましたが、駐在家庭では会社がまとめて契約しているケースが珍しくありません。
我が家もそうで、私は保険会社やプランを選べる立場にありませんでした。
選べなくても、何に入っているかを把握することはできます。
私が着任後に確認したのは次の3点です。
- 基本保険の範囲:何がカバーされていて、何が別料金か
- 追加保険の有無と枠:歯科・理学療法は追加保険で賄うことが多い
- 自己負担(eigen risico)の設定額:385ユーロか、任意で上乗せされているか
これを知らないまま病院にかかると、後から想定外の請求が来ます。

保険会社を変えた直後にホームドクターを受診したら、情報が未連携で一時的に自己負担になりました。後日払い戻し。領収書は必ずもらっておきます。
まとめ
オランダの医療保険は、義務の基本保険(全国共通・月160ユーロ前後)と、任意の追加保険(会社ごと)の2階建てです。
自己負担は日本の3割方式ではなく、年385ユーロ(2026年)までは全額、それ以降は0。ホームドクターと18歳未満は最初から自己負担なしです。
加入期限は4か月、乗り換えは年末。
これからオランダで暮らす人は、まず自分の保険証書で「基本・追加・自己負担」の3点を確認するところからです。
出典(10件)
- Rijksoverheid Eigen risico(2026年385ユーロ・任意上乗せ・対象外の医療/2026年10月時点)
- Rijksoverheid 基本保険の内容(2026年の保障範囲/2026年10月時点)
- Rijksoverheid 加入義務(4か月以内の加入/2026年10月時点)
- CAK 未加入の罰金(529.74ユーロ(2026年)/2026年10月時点)
- Rijksoverheid 保険の乗り換え(12月31日・2月1日の期限/2026年10月時点)
- Belastingdienst Zorgtoeslag(2026年の最大額と所得上限/2026年10月時点)
- Zorgwijzer 2026年の保険料(平均158.77ユーロ/2026年1月時点)
- VWS 2027年予算説明(60ユーロ上乗せの2028年延期/2026年9月)
- 厚生労働省 日・オランダ社会保障協定の発効(年金と医療保険が対象・5年以内の派遣は派遣元国の制度のみ/2026年11月時点)
- 日本年金機構 日・オランダ社会保障協定Q&A(適用証明書の扱い/2026年11月時点)
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