オランダの大晦日は、自治体の花火大会ではなく、一般の人がそれぞれ自分の家の前で花火を上げる夜でした。
あちこちから爆音が続き、空がかなり明るくなる、と聞いて迎えた最初の年越しです。
この文化は2026年の年越しで大きく変わります。
2026年8月1日に、消費者向けの花火を全国で禁止する法律が施行されました。
この記事では、市民が花火を上げてきた背景、禁止前のルールとけが人の数、2026年から変わること、年末に滞在する人の注意点をまとめました。
みんなで見る花火ではなく、各家庭の花火
オランダの年越し花火の特徴は、自治体主催のショーではなく、一般市民が自分で花火を買って上げる点です。
年末になると花火の臨時販売所が開き、決められた3日間だけ販売されました。
そして大晦日の18時から元日の2時までの限られた時間だけ、使用が解禁される。
特定の会場に人が集まるのではなく、住宅街の道路や広場、自宅の目の前で上がります。
「見る側」と「上げる側」の境界がほとんどありません。
年越しの瞬間は、家族や近所の人と外に出て、街全体が一斉に年越しに入る。
そういう、かなり分散型の年越しでした。
なぜ市民が上げる文化になったのか
よく語られるのは、ヨーロッパの古い考え方です。
「年の変わり目は悪いものが入り込みやすいので、大きな音と光で追い払う」というもの。
花火の本場・中国でも、花火はもともと悪霊を追い払うためのものでした。
ただ、オランダで今のような年越し花火が広まったのは、思ったより最近です。
19世紀には一部の裕福な人が散発的に上げる程度で、一般の家庭に定着したのは1960〜70年代だとされています。
宗教行事というより、戦後に広まった民間の習慣です。
2015年には国の無形文化遺産の目録にも登録されました。
移住者や観光客が戸惑いやすい点
住んでいる人には当たり前でも、来たばかりの人や年末年始の観光客には戸惑いやすい文化です。
まず、どこかで花火大会があるわけではありません。
決まった会場に行けば見られる、という感覚でいると、突然あちこちから音がして、何が起きているのか分からなくなります。
そして、花火が上がる場所が生活圏にかなり近い。
住宅街の道路や広場、時には自宅の目の前で打ち上げられます。
音も、日本の打ち上げ花火とは違い、爆音に近い音が断続的に続く状態です。
この戸惑いは、危険そのものより、「文化的な前提が共有されていない」ことから生まれやすいように感じます。
禁止前のルールと、けが人の数
全国禁止の前も、花火は自由だったわけではありません。
| 項目 | 2025年の年越しまでのルール |
|---|---|
| 販売日 | 12月29日・30日・31日の3日間だけ(日曜は不可) |
| 使用できる時間 | 12月31日18時〜1月1日2時 |
| 2020年12月から禁止 | 爆竹、打ち上げロケット、F3(大型)の花火 |
| 地方の独自禁止 | 2025年の年越しは20自治体(アムステルダム、ロッテルダム、ユトレヒト、ハールレムなど) |
それでも、毎年の年越しでけが人が出ていました。
| 年越し | 負傷者(救急+夜間診療所) | 内訳 |
|---|---|---|
| 2023→2024 | 1,212人 | |
| 2024→2025 | 1,162人 | 死亡2人 |
| 2025→2026 | 1,239人 | 救急474人、夜間診療所765人。20歳未満が54%。やけど37%、目のけが32%。死亡2人 |
けが人の約半分は、自分で花火に火をつけた人ではなく見物していた人です。
警察への暴力も問題になっていて、2025年の年越しでは警官406人が被害に遭いました。
一方で、2025年の年越しシーズンの花火の売上は約1億2,900万ユーロで過去最高(業界団体の推計)。
「やめたい人」と「上げたい人」が同じ国の中にいる、という状態が続いていました。
2026年の年越しから、全国で禁止
この状況を受けて、国として消費者が花火を使う・買う・持つことを禁止する法律ができました。
- 2025年4月8日:下院(Tweede Kamer)が「安全な年越し法(Wet veilige jaarwisseling)」を可決
- 2025年7月1日:上院(Eerste Kamer)が可決
- 2026年8月1日:施行。2026→2027年の年越しが、禁止後の最初の年越し
- 2026年9月1日〜10月9日:手元に残った花火の回収期間
禁止後も認められるのは、線香花火などの小さなF1花火(12歳以上)だけ。
それ以外は、市長の許可を得た団体や、免許を持つ業者による花火に限られます。
ただ、許可を出すかどうかは自治体しだいです。
アムステルダムやロッテルダム、アペルドールンなど多くの自治体が「2026年の年越しは許可を出さない」と決めています。
2026年7月の新聞調査では、342自治体のうち少なくとも99が許可なしの方針でした。
「誰でも自由に上げる」時代は、2025年の年越しで終わったことになります。
年末にオランダにいる人が知っておくこと
2026年の年越しは、法律上は花火のない大晦日です。
ただ、禁止初年度に街がどうなるかは、まだ誰にも分かりません。
違法な花火の押収量は2025年で137トンを超えていて、音がまったくしない夜になるかどうかは別の話です。
- 花火の音や煙が苦手な人は、禁止後も窓を閉めて過ごす前提で
- 花火を買って持ち込むのは、F1以外は所持だけで違法
- 自治体が許可した花火ショーがあるかは、滞在先の市のサイトで確認
- 12月31日の夜は電車の運休が多い(2025年は20時以降運休)。移動は日中に
年末年始の祝日と、クリスマスに街が静まる様子は、別の記事にまとめています。
まとめ
オランダの年越し花火は、宗教行事ではなく、1960〜70年代に広まった市民の習慣でした。
自分で買って自宅の前で上げる分散型のスタイルは、日本の花火大会とはまったく別の体験です。
毎年1,200人前後のけが人が出る状況が続き、2026年8月1日から消費者向けの花火は全国で禁止されました。
2026年の年越しが、その最初の年です。
伝統と安全の間で年越しの形が変わる、その途中に立ち会っている感覚があります。
次の大晦日が、これまでとどう違う夜になるのかは、年が明けてから追記します。
出典(10件)
- Rijksoverheid 花火対策(2026年8月1日からの全国禁止の内容/2026年10月時点)
- Rijksoverheid 花火のルール(F1は可、F2〜F4は禁止/2026年10月時点)
- Eerste Kamer 法案35.386(下院・上院の可決日/2026年10月時点)
- Staatsblad 2026, 169(施行日2026年8月1日/2026年10月時点)
- Vuurwerkbesluit(2025年12月31日時点)(販売日・使用時間の旧ルール)
- 国会宛て書簡 2026年1月5日(VeiligheidNL集計)(2025→2026年の負傷者数と内訳)
- VeiligheidNL 報告1041(PDF)(2024→2025年、2023→2024年の負傷者数)
- 検察庁OM 2026年1月7日(違法花火の押収量)
- NOS 2025年12月30日(2025年の年越しに独自禁止を敷いた20自治体)
- MAX Vandaag 2021年12月31日(年越し花火が1960〜70年代に定着したという解説)
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