スイスの世界遺産ラヴォーへ。ぶどう畑の行き方と1泊2日でできたこと
スイスといえば、マッターホルンやユングフラウのような山のイメージが強いと思います。
でも、レマン湖のほとりにはまるで違う顔があります。
湖に向かって段々のぶどう畑がどこまでも続き、その間に石造りの小さな村が点々とある。
世界遺産のラヴォー(Lavaux。ラボーとも書かれます)です。
私たちはここに1泊して、ぶどう畑を歩き、ワインを飲み比べ、観光トレインにも乗ってきました。
この記事では、ラヴォーには何があるか、どう行くか、どう回ったかをまとめます。
ラヴォーとは:レマン湖畔に広がる、段々のぶどう畑
ラヴォー地区は、レマン湖の北岸、ローザンヌとモントルーの間に広がるワイン産地です。
世界遺産に登録されているのは、ローザンヌの東の郊外から、モントルー手前のシヨン城まで約30km。
湖に面した南向きの斜面が、ずっとぶどう畑です。
斜面を石垣で区切った段々のぶどう畑(テラス)が続く景観で、2007年にユネスコの世界遺産に登録されました。
広さは約800ヘクタールで、ひと続きのぶどう畑としてはスイス最大です。
主役のぶどうは白のシャスラ(Chasselas)。
デザレー(Dézaley)やカラマン(Calamin)といったグランクリュ(特級畑)の名前が、そのまま村や家の看板に掲げられています。
数字で見るラヴォー
- 世界遺産エリアの長さ:約30km(ローザンヌ東郊〜シヨン城)
- ぶどう畑の広さ:約800ha(スイス最大のひと続きの畑)
- 石垣の総延長:約450km/テラスの数:1万以上
- 畑の標高:370〜600m
- 畑を守る生産者:約180のぶどう農家
ユネスコ世界遺産センターおよびラヴォー世界遺産協会(Lavaux Patrimoine mondial)の公表値より
畑の間に、キュリー(Cully)、リヴァ(Rivaz)、エペス(Epesses)、サン・サフォラン(Saint-Saphorin)といった小さな村が並びます。
どの村も駅があるので、電車で気軽に入れるのがこのエリアの良いところです。

この段々畑をつくったのは、11世紀の修道院
この景色は、自然にできたものではありません。
ローマ時代にもこのあたりでぶどうが育てられていた形跡はあるものの、ユネスコの説明によると、今の段々畑の原型ができたのは11世紀。
ベネディクト会とシトー会の修道院がこの一帯を治めていた時代です。
湖へ落ちていく急斜面に石垣を積んで、平らな段をつくり、そこにぶどうを植える。
畑にならない斜面を、人の手で畑に変えていきました。
その石垣が、今も全長約450km、テラスの数にして1万以上残っています。
そして今も約180のぶどう農家が、この石垣を手入れしながら畑として使っています。
1000年ものあいだ、ずっと現役の畑ということです。
ぶどうを育てるのは「三つの太陽」
ラヴォーのワインの話になると、必ず出てくるのが「三つの太陽」という言い方です。
ラヴォーの「三つの太陽」
- 1つめ:空から直接届く日差し
- 2つめ:レマン湖の水面に反射して、下から当たる光
- 3つめ:昼のあいだ石垣が蓄えて、夜に返す熱
南向きの急斜面に、湖の照り返しと石垣の熱が足される。
この三重の日当たりが、ぶどうを熟させます。
石垣は景観のためではなく、そもそもこの熱のためでもあったということです。
植えられているぶどうの約4分の3がシャスラで、畑の標高は370〜600m。
同じシャスラでも、斜面の向きや高さで味が変わると言われています。
ちなみに、私たちが乗った観光トレインの車両にも「Trois Soleils(三つの太陽)」と名前が付いていました。
なぜ世界遺産になったのか
ユネスコが挙げている登録理由は、大きく3つです。
世界遺産の登録理由(基準iii・iv・v)
- 1000年近く続く景観と建物が、今も残っていること。ワインづくりの伝統もそのまま続いていること
- 修道院や領主がこの畑を管理し、守ってきた歴史が、土地に目に見える形で残っていること
- 急斜面という条件を活かしきって、人と環境が長く関わってきた例であること
もうひとつ、ユネスコの評価文には「住民による並外れた保護」という表現が出てきます。
ラヴォーは、西のローザンヌと、東のヴヴェイ・モントルーという2つの都市圏に挟まれています。
湖畔の一等地なので、放っておけば宅地に変わっていく場所です。
実際に1972年、開発計画をきっかけに「ラヴォーを救え(Sauver Lavaux)」という運動が起きました。
1977年の州民投票でラヴォーの保護がヴォー州の憲法に書き込まれ、2005年にも約8割の賛成で同じ趣旨の条項が入り直しています。
この畑が残っているのは、たまたまではありません。
電車の窓から見えるあの景色は、住民が投票で守ってきた結果でもあります。
登録の詳細はユネスコ世界遺産センターの公式ページ、ぶどう畑や生産者のことはラヴォー世界遺産協会の公式サイトで読めます。
行き方:ローザンヌから電車で15〜20分

ラヴォーへは、ローザンヌから湖沿いの近郊列車(R1)が便利です。
私たちが乗ったときの車内表示では、ローザンヌからキュリーまで15分、リヴァまで20分でした。
村から村へも電車で数分です。
ジュネーブ空港や市内からは、ローザンヌで乗り換えます。チューリッヒ方面からもローザンヌ経由が基本です。
反対の東側から入ることもできます。
ヴヴェイやモントルー方面からも同じ湖沿いの線で、私たちはツェルマットからの移動日だったので、この東側からリヴァに入りました。
村の駅は、電車の本数に注意
- リヴァやサン・サフォランのような小さな駅は本数が少なめ。1本逃すと、次までかなり待つ時間帯もありました
- ローザンヌやヴヴェイのような大きな駅は本数があります
- 村の駅から動く日は、先にSBBアプリで時刻を見ておくと安心です
スイスの鉄道をどんな切符で回るかは、ハーフフェアカードとスイストラベルパスの比較記事にまとめています。
ラヴォーでできること4つ
私たちが実際にやったことを、そのまま4つ挙げます。
① ぶどう畑をハイキングする

畑の中を舗装された農道が網の目に走っていて、どこを歩いても湖と畑が付いてきます。
公式の案内板付きトレイル「ラ・ルート・デ・グランクリュ」もあります。
私たちはリヴァからサン・サフォランまで、寄り道込みで2時間半歩きました。
坂は本気なので、スニーカーと帽子と水はお忘れなく。
詳しくはぶどう畑ハイキングの記録へ。
② ヴィノラマでワインを飲み比べる

リヴァ村のラヴォー・ヴィノラマ(Lavaux Vinorama)には、ラヴォー全域のワインが約300本集まっています。
グラス1杯CHF3.40からの単品で、グランクリュの飲み比べもできます。
昼間から予約なしで入れるのが、後述のカーヴとの大きな違いです。
詳しくはヴィノラマでの飲み比べレポへ。
③ ラヴォー・エクスプレスで畑をめぐる(歩かない絶景)

キュリー発の観光トレイン(Lavaux Express)。
デザレーの急斜面を1時間15分で回って、大人CHF17。
畑の上での停車時間もあり、坂を1歩も登らずに絶景だけもらえる乗り物です。子連れや暑い日にも向いています。
詳しくはラヴォー・エクスプレスの乗車記へ。
④ ぶどう畑の中の村に泊まる
私たちはリヴァ村のオーベルジュに1泊しました。
部屋の片側にレマン湖、反対側にぶどう畑。
夕食では地元のワインをグラスで選べて、ここで飲んで気に入った赤を、翌日ヴィノラマの棚で見つけて買って帰りました。
日帰りでも回れるエリアですが、泊まると朝夕の静かなぶどう畑まで見られます。
宿の詳しいレポは別記事にする予定です。
注意:カーヴ(生産者の直売)は夕方しか開かない

ワイン好きの人ほど気をつけてほしいのが、生産者のカーヴの営業時間です。
村の共同カーヴは、コミューン公式の案内だとおおむね木〜日の17時から21時(キュリー、エペスなど。4月か5月から10月の営業)。昼間は基本的に閉まっています。
個人のカーヴは事前連絡が前提のところも多いです。
昼に着いて夕方に発つ旅程だと、カーヴには入れません。
カーヴ巡りをしたいなら、夕方をラヴォーで過ごせる日程にするか、昼間営業のヴィノラマを使うのが現実的です。
私たちの1泊2日モデルコース

ラヴォー1泊2日(2026年6月・木曜夕方イン/金曜夕方アウト)
- 木曜午後:リヴァ着。宿に荷物を置いて、電車5分でキュリーへ
- 夕方:ラヴォー・エクスプレスでデザレーの畑を1周
- キュリーの町を散歩して、湖畔でアイス。リヴァに戻って宿の夕食とワイン
- 金曜10:30:チェックアウトして荷物を預ける
- 午前:ヴィノラマでワイン飲み比べ
- 12:30〜15:00:ぶどう畑をハイキングしてサン・サフォランへ
- 夕方:電車でリヴァに戻り、荷物を受け取って次の街へ
1泊2日で「乗る・飲む・歩く」は全部できました。ただ、もう一泊してカーヴが開く夕方を過ごしたかった、というのが心残りです。次に行くならリヴァかキュリーに連泊します。
いつ行くのがいい?
私たちは6月で、両日とも快晴の29〜30℃でした。ぶどうは緑の小さな実の時期で、畑はいちばん瑞々しい緑です。
各施設の営業から見ると、動きやすいのは5〜10月ごろです。
ラヴォー・エクスプレスは4月〜11月頭の運行、村のカーヴも春から10月まで、ヴィノラマは5〜10月が無休(冬は月火休み)。
それぞれの最新情報は各公式サイトでご確認ください。
日差しを遮るものが少ない土地なので、夏に歩くなら帽子と水は必須です。
まとめ
ラヴォーはローザンヌから電車で15〜20分。山ばかりになりがちなスイス旅に、湖とぶどう畑という別の色を足せる場所でした。
私たちが1泊2日でできたのは、ぶどう畑のハイキング、ヴィノラマでの飲み比べ、ラヴォー・エクスプレス、そしてぶどう畑の村での1泊。
乗る・飲む・歩くは、この日数でもひととおり回れました。
一方で、生産者のカーヴが開くのは夕方からです。ここまで含めたいなら、夕方をラヴォーで過ごせる日程が必要になります。
反対に、昼だけ立ち寄るならヴィノラマとラヴォー・エクスプレスで十分に楽しめます。山から山への移動日にはさむ形でも成立するエリアです。
どこまでやるかで必要な時間が変わるので、旅程の余白と相談して決めてみてください。
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ラヴォーでやった一つひとつは、それぞれ別の記事に詳しく書いています。
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