こんにちは。さちこです。
夫が先にオランダに赴任してから数ヶ月。
通話のたびに、街の様子をいろいろ教えてくれます。
先日、オランダの家は傾いてると聞き、思わず笑ってしまいました。
地震が多い日本の感覚だと、家が傾くなんて一大事。
けれど、これがオランダでは日常の風景。地震があったわけでもなく、手抜き工事でもない。ちゃんと理由があるのです。
地盤がやわらかすぎる国

オランダの国土の4分の1は、海よりも低い場所にあります。もともとは湿地や干潟だった土地を人の手で干拓してつくった国。地盤はとてもやわらかく、普通に家を建てると沈んでしまいます。
そこで昔の人たちは、「杭(パイル)」の上に家を建てるという方法を編み出しました。何十本、何百本という木の杭を地面に打ち込み、その上に基礎をつくるのです。
木の杭は、水に浸かったままなら腐りません。でも、地下水位が下がると、空気に触れた部分から少しずつ劣化していきます。
何百年も経つうちに、杭の一部が傷み、建物がわずかに沈む。その結果が、「傾いた家」なのです。
わざと傾けている家もある?
興味深いのは、すべてが「地盤沈下のせい」ではないこと。
じつは、意図的に前のめりに設計された家もあります。
オランダの古い家には、上のほうに「鉄のフック」がついているのを見たことがあるかもしれません。あれは昔、家具や荷物を家の中に運び込むためのもの。階段がとても急で狭いため、荷物は外からロープで引き上げていました。
そのとき、家がまっすぐだと荷物が壁にぶつかってしまう。
だからあえて、荷物が壁にぶつからないようにするため、上のほうだけを少し前に出した設計にしてある家も多いのだとか。
つまり傾きはオランダ人の知恵。生活の工夫から生まれたデザインでもあるのです。
細くて高い家が多い理由

アムステルダムの家は、どれもやけに細長いと思いませんか?
これは17世紀、オランダが黄金期を迎えたころの税制度に関係しています。
当時は家の「間口の広さ」に応じて税金がかかったのです。
少しでも節税するために、みんなできるだけ狭い間口で、奥に長い家を建てました。
そうして生まれたのが、「奥に細く、高く伸びる家」。
細い家は構造的に不安定で、年を重ねるごとに傾きやすくなります。
つまり、オランダの傾いた家は、税金・地盤・生活の知恵という三つの事情が重なった産物なのです。
傾いたまま残すという選択
夫いわく、「みんな傾いてるけど、誰も気にしてない」。
中には補修された家もありますが、多くの建物は傾いたまま保存されています。
アムステルダムの旧市街は世界遺産にも登録されており、外観を大きく変える改修はできません。
傾きも含めて、街の個性として守られているのです。
安全基準を超える傾きがある家は、地盤を補強して直すそうですが、少しの歪みならそのまま。
ナナメの街に、これから住むということ
オランダの家が傾いている理由は、単なる「地盤沈下」だけではありません。
自然との戦い、生活の知恵、そして歴史の積み重ねが形になった結果です。
数ヶ月後、私もそのナナメの街に暮らす予定です。
自分の生活も少し傾くかもしれませんが、それもまたオランダなのだと思って、暮らしていこうと思います。
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