ルツェルンのムーゼック城壁を登ってみた|塔の上から旧市街と湖を見渡す
カペル橋やライオン記念碑にくらべると、ガイドブックでの扱いは控えめかもしれません。
でも、ルツェルンで「来てよかった」と思えた場所のひとつが、このムーゼック城壁でした。
旧市街を見下ろす丘の上に、ずっと連なる中世の石の壁。
しかも、無料で塔に登れて、城壁の上を歩けるんです。
下調べもそこそこに立ち寄っただけだったのに、塔と塔をつなぐ通路から見えた街と湖の景色に、思いがけず感動してしまいました。

ムーゼック城壁ってどんな場所?
そもそもムーゼック城壁とは何なのか。
ムーゼック城壁(Museggmauer)は、ルツェルンの旧市街をぐるりと守っていた中世の市壁です。
起源は13世紀までさかのぼり、いま見られる姿になったのは1400年ごろと言われています。
現存する長さは約870mで、スイスで最も長く残っている城壁なのだそうです。
かつては30基ほどあった塔のうち、今も残っているのは9基。
そのうち4基は、中に入って上まで登ることができます。

登れる4つの塔は、それぞれこんな名前です。
- ヴァハト塔(Wachtturm/見張りの塔)※下部のみ
- ツィット塔(Zytturm/時計塔)
- メンリ塔(Männliturm)
- シルマー塔(Schirmerturm)
ツィット塔の時計は中央スイスでいちばん古い塔時計で、ルツェルン市内のどの時計よりも1分早く正時を打つ、という面白い言い伝えがあります。
私たちが登ったのは、シルマー塔。
てっぺんまで登って途中まで降り、城壁の上の通路を歩いて、最後はヴァハト塔から地上に降りました。
その出口で見つけたのが、この説明板です。

そもそも、何のための城壁?
ムーゼック城壁は、ルツェルンの街を守るために築かれた防御の壁です。
旧市街の北側、ムーゼックの丘の上に、街を囲む“外側の防衛ライン”として造られました。

建設が始まったのは1370年ごろ(木の年輪を調べる年輪年代測定でわかったそうです)。
そこから何十年もかけて少しずつ積み増され、はじめは3.5mほどだった壁が、最終的に約9mの高さになりました。
ただ面白いのは、完成したころには軍事的にはもう時代遅れだったとも言われること。
実戦の備えというより、「これだけの壁を持てる街なんだ」と繁栄を見せる“街の冠”のような象徴でもあったとされています。
壁の厚さは平均1.5mほどで、地元で採れた石を積んで造られています。
城壁の上を歩けるあの通路の縁には、ギザギザの胸壁が並びます。
そしてその下の方に空いている、四角い小さな穴は、弓やボウガン(のちには銃)で、壁をよじ登ってくる敵の足元を狙うための“狭間(はざま)”です。
守る側は身を隠したまま反撃できる、という仕掛けですね。
日本のお城にもある“狭間(さま)”と同じ発想だと思います。
塔にも、それぞれ役割がありました。
見張り台になった塔、火薬や干し草をしまった塔、時計をのせた塔。用途はさまざまです。
下山のときに通ったヴァハト塔(=見張りの塔)は、もともと干し草や火薬を置く塔でした。
ところが1701年に落雷で火薬が大爆発し、塔は吹き飛んで街じゅうに石が降ったのだとか。
説明板の見出し「Ein Blitzschlag bringt einen neuen Namen(=落雷が新しい名前をもたらす)」は、この出来事のことだったんですね。
旧市街から歩いて、坂をのぼる
行き方はシンプルで、ルツェルンの旧市街から歩いて向かいました。
旧市街のすぐ近くなので、徒歩10〜15分ほどだった記憶です。
ただし、城壁は丘の上にあります。
上のほうへ行くには階段やスロープ状の道をのぼることになり、ここがまあまあの坂です。
距離は短いのですが、普通に体力を使います。
歩きやすい靴で行くのがおすすめです。
塔をのぼる─木の階段は急
塔の中に入ると、上まで木製の階段が続いています。
これが急で、日本のお城の天守にある急な階段を思い浮かべてもらうと近いかもしれません。
手すりがあるので、しっかりつかまれば登れます。
幅は、すれ違えるところもあれば、すれ違えないところも。
人が降りてくるときは、下で一人待ってから登る、という感じでした。
高いところが苦手な人は、少し怖いと感じるかもしれません。
私もちょっと怖かったので、とにかく手すりを持って慎重に上り下りしました。

塔の上そのものは、特別に何かがあるというより、見晴らしのいい場所、という感じ。
壁に空いた小さな狭間(さきほどの“穴”ですね)や、昔の建材の展示もあって、構造を間近で見られるのは面白かったです。

城壁の上の通路の景色が美しい
この場所で感激したのは、塔そのものより塔と塔をつなぐ城壁の上の通路でした。
ひとつ塔を登ると、そこから隣の塔へ向かって、城壁の上を歩いていける区間があります。
その通路から見えた、ルツェルン湖と街並みが本当にきれいでした。


城壁の内側と外側で、雰囲気が全然ちがう
もうひとつ面白かったのが、城壁をはさんで内側と外側で空気が変わること。
旧市街の反対側のほうは、ルツェルンに暮らす人たちのスペースという雰囲気でした。
スポーツができそうな広場があったりして、観光地というより生活の場という感じ。
壁を挟んで街の雰囲気が違って、そこも歩いていて楽しかったです。
城壁のふもとには、ところどころベンチもありました。
行く前に知っておきたかったこと
正直に書くと、私は下調べが足りなくて、少しもったいない歩き方をしてしまいました。
中途半端な塔から登ってしまったうえ、出口の方向も間違えて、旧市街の外側に出てしまったんです。
そこから旧市街側に戻る道がなかなか見つからず、右往左往していました。
通路は端から端まで一本でつながっているわけではなく、途中で行き止まりになる区間がありました。
事前に構造をざっと頭に入れておくと、もっとスムーズに回れたと思います。
なお、トイレや売店はありません。
公式も「車椅子・ベビーカーでの見学はできない」「塔の階段は狭く急、通路も細い」「高所恐怖症でないことと基本的な体力が必要」と案内していて、バリアフリーな場所ではありません。
足元のしっかりした靴で、体力に余裕をもって行くのがおすすめです。
基本情報(2026年6月時点)
ムーゼック城壁・登れる塔のメモ
- 開放期間:4月1日〜11月1日(冬季・11〜3月は閉鎖)
- 開放時間:8:00〜19:00
- 料金:無料(チケットも受付も、QRもありません)
- 登れる塔:ヴァハト塔(下部のみ)・ツィット塔・メンリ塔・シルマー塔の4基+城壁の通路
※時期や時間は変わることがあるので、訪れる前に公式サイト(museggmauer.ch)での確認をおすすめします。
おわりに
ムーゼック城壁は、わざわざ高いお金を払って入る派手な観光地ではありません。
でも、入場は無料で、ふらりと登れて、塔の上や城壁の通路から街と湖を見渡せる。
それだけで、私にとってはルツェルンで思いがけず心に残る場所になりました。
正直、ここは予定にも入れていなかった寄り道でした。それなのにこの眺め(しかも無料)。ルツェルンで一番得した気分だったかもしれません。
この日はこのあと、ライオン記念碑のほうへ歩いていきました。
時間に余裕があれば、旧市街の散策とあわせて、ぜひ少し坂をのぼってみてください。

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