こんにちは、さちこです。
先日、夫からこんな話を聞きました。
「オランダには、24時間開いてるコンビニはほとんどないよ」
え、まじで?日本では街の角を曲がれば、夜中にアイスでもお酒でも買えるのに…。
調べてみると、その理由にはオランダの社会や文化、歴史、働き方、物流や環境政策などが複雑に絡んでいることがわかりました。ざっくり言うと、「夜中に買い物をする文化がない」「高い人件費と短時間勤務文化」「スーパー中心の買い物習慣」「物流・制度・環境政策の事情」の4つが、大きく影響しています。
夜は休む文化と営業時間規制
オランダでは、夜遅くまでお店を開けることに対して社会的・制度的な制約があります。
法律上も「Winkeltijdenwet(店舗営業時間法)」というルールがあり、店舗の営業時間は原則06:00〜22:00まで。日曜や祝日の営業は自治体が厳格に管理しており、特別な許可がないと夜間営業はできません。
この背景には、歴史的・文化的な価値観が関係しています。
- キリスト教の安息日思想で、日曜は家族や休息の時間とされてきた
- 家庭や余暇を重視する文化
- 労働者を夜遅くまで働かせない社会的な慣習
つまり、オランダでは「お客さんの便利さより、働く人の生活リズムを守ること」が優先されます。
日本では24時間営業や深夜勤務が当たり前ですが、オランダでは夜にお店を開ける発想自体が育ちません。
昼間にまとめ買いする買い物習慣

オランダの人はどうやって生活必需品を手に入れているのでしょうか。答えは「昼間にまとめて買う」ことです。
1960年代以降、Albert Heijn や Jumbo などの大型スーパーが全国に広がり、買い物の中心はスーパーに集約されました。背景にはいくつかの理由があります。
- 車や自転車を使って週に1〜2回まとめ買いする文化
- 自炊中心の食生活で、外食需要が小さい
- 高い人件費では小規模商店が深夜営業を維持できない
都市部では夜遅くまで開く小型スーパーやガソリンスタンド併設の売店もありますが、日本のコンビニのように角々に高密度で存在するわけではありません。
つまり、オランダでは「夜中にちょっと買い足す」という文化がそもそも育たなかったのです。
高い人件費と短時間勤務文化
さらにオランダでは人件費が高く、フルタイムでなくても生活できる社会制度が整っています。最低賃金はEU内でも高水準で、医療・年金・教育も手厚いため、短時間のパートタイム勤務でも生活が成り立ちます。
実際、オランダのパートタイム率はOECDでも世界トップクラス。男女ともに、週3〜4日勤務や1日6時間勤務で働くのが珍しくありません。
こうした背景から、長時間スタッフを張り付けて夜中まで営業する発想がそもそも必要ないのです。
オランダでは「必要な時間に必要な人数を配置する」「高い時給でも短時間で回す」ことが合理的と考えられています。
日本のように「安く長時間人を働かせて便利さを提供する」モデルとは真逆の価値観です。
物流・環境・制度の事情
日本型コンビニが成立するには、単に人件費や文化だけでなく、物流や情報、環境制度も重要です。
- 物流・出店コスト:日本は都市部に「少量頻回配送」を回す物流システムが整い、狭くても高密度のコンビニが成立します。オランダでは、都市の角々に小さな店舗を多数補充する文化や投資が少なく、出店コストが高くなるため、日本型モデルが経済的に成り立ちにくい。
- 環境政策・リサイクル:オランダではボトルのデポジット(statiegeld)制度が整備され、街角での即購入・即廃棄型の消費が抑制される。つまり、街角で飲み物を気軽に買うニーズ自体が低い。
- 防犯・公共空間:日本は治安が比較的良く、24時間営業でも安全に利用できますが、オランダでは深夜に歩く人が少なく、防犯面でも24時間営業のニーズが低い。
- 情報インフラ:日本はPOSデータや需要予測が高度に管理され、地域別・時間別に補充量を最適化。オランダではこうした細かい情報連携が全国規模で普及していないため、少量頻回配送や過密出店が難しい。
日本とオランダの“当たり前”の違い
- 日本
- コンビニが24時間営業
- 並んだらすぐにレジを増やす
- 店員は笑顔で接客
- オランダ
- スーパーは夜8時に閉店
- レジが長蛇でも誰も急かさない
- 店員は必要な時間だけ働き、効率的に業務をこなす
便利さを優先する日本と、生活の質や労働者の権利を優先するオランダ。どちらが良い悪いではなく、社会の価値観がそのままお店文化に反映されています。
まとめ
オランダにコンビニがほとんど存在しない理由は、
- 夜は休む文化と営業時間規制(Winkeltijdenwet)
- 昼間にまとめ買いする買い物習慣
- 高い人件費と短時間勤務文化
- 物流・環境・制度・情報インフラの事情
の4つが重なっているからです。
日本で当たり前の便利さも、オランダでは「必要ない」と判断されている。
こうした“当たり前のズレ”を知ることこそ、異文化の面白さだと思います。
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